ソーシャルデザイン・ラボの情報にご興味を持って頂き、ありがとうございます。今回は、本日(2022年1月13日)発表されました、ネットイヤーグループ株式会社との業務提携にちなんで、私たちが提案するコーポレートベンチャーフィランソロピーについて簡単にお話ししようと思います。
そもそもフィランソロピーとは?
フィランソロピーはギリシア語の「愛」と「人類」をを語源とした、「人類への愛」といった言葉ですが、企業においては、「社会貢献活動」が一般的にピンと来る言葉だと思われます。具体的には、寄附、ボランティアやプロボノ活動をする場の提供に加え、ウェルビーングに資する、ダイバーシティ&インクルージョンの活動や子育て支援などがそれにあたります。
ベンチャーフィランソロピーの登場
1990年代後半から、フィランソロピーにベンチャーキャピタルの思想を持ち込んだ、ベンチャーフィランソロピーというモデルが登場しました。このモデルは、個人や企業が直接、寄付を通して非営利法人や社会起業家を支援するのではなく、中間支援団体としてのベンチャーフィランソロピーが、寄付を集約して資金規模を拡大した上で、よりソーシャルインパクトが大きい非営利法人や社会起業家を目利きした上で寄付を行うモデルです。さらに、一般的なベンチャーキャピタルと同様に、事業運営をサポートするための経営指導を実施したり、結果としての社会的インパクトについて評価したりする点も大きな特徴です。
一方で、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)というモデルがあります。これは、大手企業を中心に自社の事業とのシナジーを念頭に、ベンチャー企業への投資を行います。最近ではオープンイノベーションの活動を通して、自社事業との親和性が高い企業を探し、投資と共創により自社事業の拡大を狙う動きが活発になっています。
コーポレートベンチャーフィランソロピーと戦略的寄付
ソーシャルデザイン・ラボではフィランソロピーにCVCの考えを持ち込んだコーポレートベンチャーフィランソロピーのモデルを「戦略的寄付」として、2019年に実施された第3回日経ソーシャルビジネスコンテストで発表し、その斬新さからファイナリストに選出され、審査員の先生方から「目から鱗だ」との講評を頂きました。具体的には、大企業グループの各子会社が、税引き前利益の例えば1%をイノベーション基金のような形で寄付を行い、それらを原資として、CSR観点での社会貢献活動への寄付を行う(いわゆる1%Clubモデル)のではなく、自社企業グループとの事業シナジーが期待できるソーシャルビジネス(社会課題の解決を第一とするが、同時に営利追求も行うビジネス)に投資することで、社会課題と自社の事業課題の解決を両立することを提案しました。
企業にとって寄付はハードルが高い
日本においては、キリスト教圏に比べて寄付の文化がそれほど根付いていません。加えて、多く企業にとっての寄付は、節税対策等の少々ネガティブな印象や、営利事業とは完全に分離して考えられることが一般的で、高額寄付へのハードルが高い権限規定になっていることが多いようです。
そこで、そもそも金銭的寄付を原資とする以外にソーシャルビジネスに取り組んでいる社会起業家を支援することはできないだろうかと検討を続けました。そして、そもそも論として、「お金」は事業を成立させる4つの要素、「人・物・金・情報」のうちの一つでしかなく、しかも現在のようなデジタル社会においては、借金をしてでもIT投資(情報技術投資/デジタル投資)をする時代です。年商10億円規模の企業であれば、5000万円〜1.5億円のIT投資が必要という話もありますし、ましてや起業したばかりであれば、初期投資として調達した資金の多くをIT投資に回して、事業の拡大に備えたいところですし、人手不足はお約束の課題でしょう。
そういう状況の社会起業家にデジタル技術やITサービスの無償提供をすることは、お金による寄付(投資)と何ら変わらない価値が提供できるという考えに基づき、ソーシャルデザイン・ラボでは、寄付による金銭的支援に加えて、ITプロボノによる技術提供やITサービスの無償提供を実施しています。
価値変換による社会的投資
すなわち、中間支援団体として、デジタル技術やITサービスの無償提供を社会的投資の原資と捉え、我々が考える「優しい社会」の実現や、すでに支援しているソーシャルビジネスとのシナジーが期待できる社会起業家に対して支援を行うことで、コーポレートベンチャーフィランソロピーとしての機能を果たそうとしているのです。
そして、更なる支援拡大に向けて、本日、2021年1月13日にNTTデータグループの1社である、ネットイヤーグループ株式会社と業務提携を行いました。我々の提案するコーポレートベンチャーフィランソロピーの支援規模拡大のために、ネットイヤーグループに「ソーシャルインパクト事業準備室」を設置し、SDLの代表理事である私が、室長として就任しました。
今後は、非営利法人としてのソーシャルデザイン・ラボの活動と、ソーシャルインパクの最大化を目指す営利企業部門としてのソーシャルインパクト事業準備室との共創を通して、社会起業家への支援を拡大していきます。
また、2月19と20日に開催される日本ファンドレイジング協会主催のイベント、FRJ2022において、「その活動、デジタルのチカラで加速させたい ~社会的投資への価値変換~」と題して講演を予定しており、今回の提携内容についても詳しく触れる予定です。
我々の支援に興味がある社会起業家の方、また、我々の活動に共感して頂ける支援者の方は、気軽に問合せフォームよりお問い合わせください。